東京地方裁判所 昭和45年(ワ)11320号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕<証拠>によると
(一) 本件事故現場の状況は別紙のとおりである。
(二) 訴外笠井哲男は加害車を運転して本件事故現場付近に差しかかつたが、当時は道路工事中で路面が凸凹だつたため時速約一〇キロメートル程度まで速度を落して進行した。同訴外人はガードから既に六六メートル程離れた地点で、足場板の上でガードの橋げたにペンキ塗をしていた二人の男性を発見した。同訴外人は自車に長物を積んでいるので気をつけなければと思いながら接近したものの、この高さと足場板の高さをさらに正確に判断するため、直前で一時停止して高さを比べるなどの安全を確認しなかつたため、ガード下に入り約五メートル程進行した地点で積載材木の先端を踏板に接触させ、原告および訴外久米隆弘を路上に転落させた。
(三) 訴外久米久男と訴外隆弘および原告は、一緒にガードの橋げたのペンキ塗の仕事に従事していた。この作業に便宜という理由で同人らは別紙図面の形状の足場をきずき足場板をわたしが、これについては所轄警察署長の許可を受けていなかつた。
足場板の高さは地上から2.78メートルしかなく、本件事故前から原告ら作業員は、同板がここの通過車の障害となることを知悉していた。本件事故前は訴外久男が路上で通過車に注意を与え、高さのある車が来たときは原告と訴外隆弘との二人で足場板の両端を持つて通過させるという方法をとつていた。しかし事故時には訴外久男が材料を取りに行つていて現場を離れており、原告もしくは訴外隆弘のいずれかが見張りに立つという方法もとつていなかつた。
足場板の高さは地上から2.78メートルしかなく事故時は原告および訴外隆弘が乗つていたため、その部分は重みでさらに下がり、加害車の積載木材の高さは地上から2.67メートルであつたのに接触する結果となつた。
以上の事実が認められる。
右認定事実によると、訴外笠井には長物を積載した加害車を運転し、事故現場よりかなり離れた地点で原告および訴外隆弘に気づきながら、足場板のところにさしかかる直前で一時停止して高さを十分確かめることなく進行した過失があるから、その使用者である被告会社は、その業務上生じた本件事故につき民法七一五条の責任があると言わざるを得ない。
しかしながら、現場で作業していた原告外二名にも、貨物自動車との接触が十分予測されるにも拘らず、自動車の方で注意してくれるだろうと漫然と作業に従事していた過失があるから、後記賠償額を定めるに当り、三割の過失相殺をすることとする。 (佐々木一彦)